「求人を出しているのに、応募がほとんど来ない」「やっと採用できても、すぐに辞めてしまう」。そんな声をあちこちで耳にするようになりました。少子化が進むなか、人を採ること自体が年々難しくなっています。採用にかける費用も時間も増える一方で、思うように人が集まらない。そうした状況で、採用だけに頼り続けることに限界を感じている方も多いのではないでしょうか。実は、人手不足への打ち手は「採る」だけではありません。今いる人材をどう活かすか、という視点を持つことで、できることはぐっと広がります。

「採る」だけでは人手不足は解決しない
人が足りないとき、まず頭に浮かぶのは「採用」です。もちろん採用は大切な手段ですが、これだけに頼るのはリスクがあります。求人を出して、応募を集め、面接を重ね、入社後に育てる。ここまでには相応の時間も費用もかかります。そして苦労して採った人が定着しなければ、また同じことを一からやり直すことになります。
そこで見落とされがちなのが、「今いる人材を活かす」という視点です。社員一人ひとりが力を発揮できていない、合わない仕事に就いている、辞めたいと感じている。こうした状態が放置されていると、人を増やしても穴は埋まりません。逆に言えば、今いる人材の力を引き出せれば、新しく採らなくても人手不足はかなり和らぎます。
採用以外の人手不足対策
採る以外にできることを、大きく4つに分けて見ていきます。どれか一つだけでなく、組み合わせて取り組むことで効果が高まります。
①既存社員の定着
せっかく採用した人が辞めてしまえば、人手不足は一向に解消しません。まずは今いる社員に長く働いてもらうことが、もっとも確実な対策です。何が不満なのか、どんな働き方を望んでいるのかを把握し、待遇や職場環境、人間関係といった離職につながりやすい要因に手を打っていきます。新しく一人採るより、今いる一人に残ってもらうほうが、コストも手間も小さく済みます。
②育成で一人ひとりの戦力を上げる
人数を増やせなくても、一人ひとりができることを増やせば、組織全体の力は底上げできます。必要なスキルを整理し、計画的に育てていくことで、少ない人数でも回せる体制に近づきます。育成は時間がかかりますが、社員にとっては成長の実感につながり、定着にも良い影響を与えます。
③適材適所の配置
同じ人でも、向いている仕事に就けば力を発揮しやすくなります。誰がどんな強みを持っているかを踏まえて配置を見直すだけで、これまで埋もれていた力が動き出すことがあります。新しく人を採らずとも、今いる人材の組み合わせ方を変えるだけで、現場の手詰まりが解消することは少なくありません。
④業務の効率化・生産性向上
そもそもの仕事量を減らす、あるいは一人あたりの生産性を上げるという発想も欠かせません。手間のかかる作業を見直したり、ムダな工程を省いたりすることで、同じ人数でこなせる仕事は増えます。「人を増やす」前に「今のやり方を変える」ことで、必要な人数そのものが減らせる場合もあります。
共通する土台は「人材を見える化すること」
ここまで挙げた定着・育成・配置・効率化は、それぞれ別々の取り組みに見えますが、実は共通する土台があります。それは「誰がどんなスキルを持ち、今どんな状態にあるのか」が見えていること。これが分からないままでは、どの打ち手も手探りになってしまいます。
たとえば、誰が辞めそうかが見えなければ定着の手は打てません。誰に何が足りないかが分からなければ育成の計画は立ちません。強みが見えなければ適材適所の配置もできません。つまり、人材の情報を一か所に集めて見える状態にすることが、すべての出発点になります。
こうした考え方を支えるのが、社員一人ひとりの情報を集めて活用するタレントマネジメントとはの記事で紹介している取り組みです。スキルや経歴、評価、本人の希望といった情報を整理しておくことで、定着・育成・配置の打ち手が初めて機能するようになります。
取り組みの進め方
とはいえ、いきなりすべてに着手するのは現実的ではありません。無理なく進めるためのポイントを整理します。
まずは現状把握から始めます。今いる社員がどんなスキルを持ち、どこに不満を抱え、どこに無理が生じているのか。ここが見えないと、打ち手の優先順位もつけられません。
次に優先順位をつけることです。定着・育成・配置・効率化のすべてを一度にやろうとすると、どれも中途半端になります。自社にとって今いちばん効きそうなところから手をつけるのが現実的です。
そして、続けられるように仕組みで支えること。担当者の頑張りだけに頼ると長続きしません。人材の情報を集めて活用する仕組みを整えることで、無理なく取り組みを続けられます。具体的な道具を検討する際は、タレントマネジメントシステムの比較記事が参考になります。
まとめ
人手不足というと、つい「どう採るか」に意識が向きがちです。けれども、採用が難しい時代だからこそ、今いる人材をどう活かすかという視点が大きな意味を持ちます。定着・育成・配置・効率化という採用以外の打ち手は、いずれも「人材が見えていること」を土台にしています。まずは自社の人材を見える状態にすることから、できる対策を一つずつ進めていきましょう。新しく採ることだけが、人手不足の答えではありません。
よくある質問
採用以外に何ができますか?
大きく分けて、今いる社員に長く働いてもらう「定着」、一人ひとりの力を伸ばす「育成」、向いた仕事に就いてもらう「適材適所の配置」、そして仕事のやり方を見直す「効率化・生産性向上」の4つがあります。これらを組み合わせることで、新しく採らなくても人手不足を和らげることができます。
中小企業でもできますか?
できます。むしろ社員数が限られている分、一人ひとりを活かす取り組みの効果は大きくなります。大がかりな仕組みをいきなり入れる必要はなく、まずは今いる社員のスキルや状態を整理して見える化するところから始められます。規模が小さいほど、現状把握も手がつけやすいはずです。
何から始めればいいですか?
まずは現状把握、つまり「誰がどんなスキルを持ち、今どんな状態にあるか」を整理することから始めるのがおすすめです。ここが見えると、定着・育成・配置・効率化のどこに手をつけるべきかが自然と見えてきます。一度にすべてをやろうとせず、自社にとって効きそうなところから一つずつ進めていきましょう。
